【Red Velvet】Bad Boy考察
こんにちは、エトです。
今回は「Bad Boy」の考察です。
第一章: MVの謎
MVは様々な場面が入り混じっている為、時系列が分かりにくいが、考えられるストーリーをそれぞれ書き出してみる。
Ⅰ. 恋愛的模様
浴槽に座る制服姿の5人。
イェリの横には「本」があり、浴室には似つかない「雪」が舞っている。
そして雪原にぽつりと置かれたベッド。
この違和感に気付いただろうか。
本来、温かい浴室に雪は合わないし、
寒い雪原に温かいベッドはおかしい感じがする。
このような現象を"dapaysement"と呼び、美術用語で「モチーフが本来あるべき所ではなく異なる空間に配置する事によって生じる違和感」を指す。
これを用いるのは「シュルレアリスム」派の画家たちの技法で、元々は「シュール」という言葉から来ていると説明すれば分かりやすいだろうか。
そしてこの超現実主義を代表する画家と言えば、私の記事を読んで下さっている方はもうお分かりだろう。
またルネ・マグリットだ。
上の作品は「イメージの裏切り」というタイトルで、忠実に表現されたパイプが描かれているが、その下には「これはパイプではない」と記されている。
いくらパイプの絵を忠実に描いても、これは本物のパイプでは無いーここまでは分かるだろう。しかし、マグリットが言いたい事は恐らくこれほど単純でもなさそうだ。
MVに話を戻そう。ここでは「唇」の絵と「これは唇ではない」と記されている。
唇の絵はよく横向きで描かれるが、縦向きで描かれている事を少しだけ覚えていて欲しい。
ベッドの上でスルギの肩を借りて安心したように眠るジョイ。2人の関係はどこか官能的な雰囲気すらも感じられる。
この2人は恋人関係にあると推測する。
そして2人は本を挟むようにして眠る。上唇と下唇は2人の眠る姿勢に見えないだろうか。
つまりこれは唇ではなく、2人の間柄を唇に模して表した物だと推測する。
しかしスルギは「本」を落としてしまう。本がスルギとジョイの恋人関係を暗示する物ならば、関係が破綻してしまうのではないか心配である。
どこか不安げなジョイの視線の先にはアイリーンが。浴槽ではジョイだけがこちらを向いていない。
この時アイリーンが
"Who dat who dat who dat boy (バッドボーイは誰?)"
と聞いている。これが最重要ポイントだ。
場面が変わりイェリが登場する。彼女は白い布に隠れるようにして先ほどの本を手に取っている。2人の関係性を知ってしまったのか。
そのままどこかへ行こうとするイェリ。
(パジャマの袖がイェリの物と同じ)
しかし、イェリが部屋からこっそり抜け出してどこかへ行くのをウェンディは気付いていたのだ。
誰かがタイプライターの「V」を押すと場面は柔らかな雰囲気から一気に変わる。
イェリが覚醒した。もたれている脚はスルギのものだ。推測ベースだが、イェリはひっそりとスルギに想いを寄せているのではないか。
メンバーが集まって本を読んでいる。ウェンディの本だけ唇のマークがついた例の物だ。つまり、ウェンディも2人の関係を知っているのだろう。
そして彼女は何かの写真を撮ったようだ。
その後カメラを燃やすウェンディ。その様子をスルギとジョイは真剣に見ている。彼女たちの秘密を撮ったカメラを証拠隠滅したと言わんばかりの行為だ。
しかしよく見るとカメラが別物に見えないだろうか。実際に撮ったカメラはオレンジ色だが、燃やしているカメラは黒。
更には撮ったポラロイドを本に挟んでベッドの下に隠すほどだ。ウェンディは彼女たちの味方のフリをしているだけなのか。(パジャマとネイルからウェンディと判断)
2人の関係を知りショックを受けたイェリを守るように耳を塞いであげるアイリーン。
この構図はまさに「Russian Roulette」でも見られたものだ。アイリーンは常にイェリを守ってあげる存在なのだろう。
イェリを可愛がるアイリーンが取った行為は「2人の恋仲を引き離す」事だった。
アイリーンはジョイを誘惑し落としたのだ。
ジョイの裏切りをスルギに告げるイェリ。あれだけ優しい目をしていたスルギの目つきが一変した。
スルギはこれまでとは打って変わって、お金を撒き散らしたり奔放な振る舞いを見せる。
黒いハートのサングラスはまさに「恋による嫉妬や怒りに盲目になった姿」のように見える。
ここでもウェンディが不可解な行動を取る。
彼女はアイリーンとジョイが一緒にいた場所に設置してあった防犯カメラを破壊している。
嫉妬に狂ったスルギは兼ねてから準備していた銃でアイリーンに報復するのか。
しかしアイリーンに限って簡単に自分が狙われるような事をするだろうか?
彼女はスルギがいる白黒の世界(=廃れた心)へ車を走らせる。
彼女の胸中に入り込んだアイリーンはどこか安堵したような表情にも見える。雪原が赤く染まっていると共に、スルギの前髪が突然赤く変化している。
目を覚ますとジョイ以外の4人とキャリーケースが置かれただけの元の雪原に戻っていた。
スルギはアイリーンではなく、裏切った張本人のジョイを撃ったのではないだろうか。
赤く染まった雪原と前髪はジョイを撃った時の血液が連想される。
また、赤い世界でイェリがいない理由は過保護のアイリーンがまたショックを与えないように隔離したのではないかと考えられる。
ベッドはジョイとの思い出の場所、キャリーケースには彼女との思い出が詰まっているのだろう。
思い出の場所から離れていくスルギの姿。手持ちのキャリーケースをどうするかは分からないが、これを処理するにしろしないにしろ、彼女はもうジョイから吹っ切れたのだろう。
初めは眠っていたがアイリーンが目を覚ます描写と共に全員が目を覚ましたようだ。
ここで注目すべきはウェンディだけアイマスクをしていないという点である。
やはりウェンディの謎はここにもあるようだ。推測するに、結局ウェンディは多様な愛がバレないように立ち回る事から「先見の眼」を持っていると考える。
それならば、イェリが座っている「虹模様のユニコーン」の意味がよく分かる。
「Hapiness, Peek-A-Boo」でも触れた
この事からイェリは同性愛的理解のある人間で、その対象はスルギ、そしてまたスルギも同性愛的理解がある。という事だ。
何故イェリとスルギだけが「Peek-A-Boo」で服にLGBTにまつわるメッセージともとれる文字が書いてあったのかは今作に繋がっていたのかもしれない。
以上がメンバーを巡る恋模様だ。
Ⅱ. "Bad Boy"は誰?
冒頭でアイリーンが問い掛けた「Bad Boyは誰?」の答え合わせをしよう。
まず分かっている事はMV中に「悪い男性」は全く登場しないという事だ。
ストーリーを簡単に整理すると
①スルギとジョイが恋人関係
②イェリが気付きショックを受ける
③アイリーンがジョイを誘惑し落とす
④イェリがスルギに密告する
⑤スルギが裏切ったジョイを撃つ
これを「悪い」という概念で考えると真っ先に"悪い"のは勿論アイリーンである。
素知らぬ顔で「Bad Boyは誰?」と問い掛けるアイリーンのアイロニーは流石である。
次に"悪い"のはスルギを裏切りアイリーンに落ちたジョイである。
ジョイは元々他のメンバーと違いスイーツをたくさん食べている姿から見ると甘い物(=誘惑)に弱い人間なのだろう。
そしてイェリ。無垢であるが故にアイリーンに染められて"悪"に落ちていく。
最後にジョイに裏切られた報復として彼女を撃ってしまい"悪"に落ちたスルギ。
それならウェンディは?
彼女の行動はいつも意味深で、更に終始余裕のある笑みすら浮かべていたのが印象的だった。
ジャケット写真に注目すると、中央に「悪魔の尻尾」が見える。
飛躍した解釈にはなるが、この悪魔と最初に契約したのがウェンディで、他のメンバーを"悪"に落とす契約を交わしたのではないだろうか。
そしてタイトルの"Bad Boy" の正体とは。
勿論、この5人の事を指している。
それなら"Bad Girl"では?と思うだろう。しかしよく考えてみてほしい。
私たちは"Bad Boy"と聞くと自然と「悪い男性」をイメージする。それは見た目かも知れないし、性格かも知れない。しかし、それはただの"イメージ"に過ぎない。
"Bad Boy"というタイトルでありながら、"これはBad Boyではない"のだ。
単なるMV中のモチーフとしてマグリットの作品を出したのではない。"Bad Boy"という作品全てがマグリットの「イメージの裏切り」に対する壮大なオマージュなのだ。
これは私たちに対して「イメージ(固定概念)に騙されるな」という警告にも捉えられる。
Ⅲ. ヴァンパイア的要素
これまで「Automatic, Ice Cream Cake, Peek-A-Boo」で考えられてきたヴァンパイアの要素の続編だ。
ここでは本をメタ的に捉えず、そのままの意味の「本」として考えよう。
スルギがジョイに読み聞かせをしている。
これはティーザーを見なければ分からない事であるが、本の表紙にある唇の跡はイェリがつけたものなのである。
イェリの唇と言えば、同じティーザーで血みどろにさせているシーンも見受けられた。タイプライターを使って白いベールを纏って隠れるようにこの本を書いていたイェリ。彼女がこの本の作者である事が伺える。
ではその本の中に書かれている事とは一体何だろうか。
「V」を押すと途端に切り替わる世界。ここからはスルギの読み聞かせの内容か。
勿論、このVは「Vampire」の頭文字だ。
彼女たちヴァンパイアと対比して、後ろにマネキンがある。このマネキンを人間と仮定しよう。
マネキンが乗っている箱のようなものにはタイヤがついている。恐らくヴァンパイアである彼女たちを追う者(吸血鬼では無いかと疑っている者)たちだ。
完全たるヴァンパイアであるウェンディは、自分たちヴァンパイアの血筋が人間により根絶される事を絶対に許さないだろう。
チェキで5人の写真を収め、自分たちヴァンパイアの出来事を綴った「本」に挟み、人間の目につかない所に隠す。
そうして自身の周りを嗅ぎ回る人間たちを抹殺するというシナリオだ。
彼女たちの住処となっている所の変化を見るとその本気さが伺える。今までは普通の屋敷であったが、人間に追われている事に気付くと家具をビニールで覆ったり、椅子を片付けている。
場合によっては住処を捨てる覚悟もあるようだ。
アイリーンはそれまで厳重な警備を敷いていた門の鎖を断ち切り、メンバーを連れて屋敷の外に出る。
屋敷の内外でスプレーをマネキンに吹き掛けているのは「人間を始末」している事の暗示だ。その為マネキンの色は赤くなっている。
彼女たちは吸血鬼なので、ここで人間の血を摂取している事も十分に考えられる。
時を同じくしてウェンディも人間が集まる場所に向かい、人間を始末する。犯行の証拠隠滅の為に防犯カメラを壊すなど後始末も完璧である。
彼女の足元には横たわった(=始末された)マネキンが。
スルギは別の場所へ向かい、雪原にいる。
彼女が持っているキャリーケースには捨てる覚悟の屋敷から持ち出した大事な物が入っていそうだ。
そして一足先にここへ来たスルギは、その場所にすらも人間が追って来ないか警戒している。
ウェンディは追っ手である人間たちが集う場所を燃やし去り、彼らを始末したようだ。
ここでの「BAD BOY」は、彼女たちを追う人間の事を指すのだろう。
そしてジョイが人間がいた箱のような所のドアを余裕のある表情で開けている。
こうして彼女たちは完全に制圧した事が伺える。
屋敷に一旦集まり祝杯を上げるメンバー。
赤いケーキには血のようなものが滴っている。
そして屋敷を離れ、また彼女たちは新たな住処を探しに出るのだろうか。
「Peek-A-Boo」の謎でもあったが、彼女たちの屋敷は数種類あった事から、もしかすると住処を転々としている可能性も考えられる。
ここでジョイがいない点についてはまだ具体的な理由が見当たらない。
しかし、MV中に雪原を5人で歩くシーンは多く見られる為あまりここでは深入りしないようにしよう。
読み聞かせ中はその物語に入り込むように眠っていた5人。読み終わるとアイリーンを始めとして起きる。
冒頭、読み聞かせが始まる時にタイプライターを押した指はネイルの色からアイリーンだと言う事が分かる。
またアイリーンがきっかけとなって今回のMVが始まっていたという訳だ。
そうなると読み聞かせ中にどこかへ行くイェリとそれに気付くウェンディの行動は今後何かに繋がって来そうである。
以上がヴァンパイア要素だ。
第二章: Red Velvetの謎
Ⅰ. 各メンバーの役割
このMVで5人のメンバーがRed Velvetというグループの中でどのような役割を果たしているのか、おおよその枠組みが見えてきた。
①先導者アイリーン
これは有名な要素ではあるが、アイリーンは車が登場するMVでは必ず運転手役である。
また「Rookie」では花男を操っていたり、火をつけて異空間を作り出したり。「Peek-A-Boo」でも最後に車に乗り込むのはアイリーンであるし、電話でピザ屋の配達員を呼ぶのも彼女だ。
つまりRed Velvetにまつわる謎は全てアイリーンがきっかけで発生するのだ。
②主人公スルギ
「Automatic」では苦悩の中に生きる吸血鬼、
「7월7일」では意思をもって船内へ行く姿、
「Rookie」ではアリスの世界に引き込まれ、
「Bad Boy」では裏切られ復讐するスルギ。
彼女は数々のMVの中でも「主人公」のような登場の仕方が多い。
よく彼女だけ衣装が違ったりする点にも共通するのだろうか。
③事態を助長させるウェンディ
「Russian Roulette」では過激なイタズラをメンバーに仕掛けたり、「Automatic」では吸血鬼になりきれないスルギを叱咤するような存在であった。
ウェンディはアイリーンが仕立て上げた物語を加速させる役割を担っていると考えられる。
④開拓者ジョイ
「Hapiness, 7월7일, Rookie」等でジョイは扉を開ける描写が圧倒的に多い。
今回もジョイは扉を開けており、過去のMVではアイリーンが作り上げた物語から脱出しようと試みている。
ジョイはRed Velvetという童話から現実世界に出ようとしているのだろうか。
⑤弱者イェリ
先程のMVの謎でも少し触れたが、イェリは全体を通して「幼い末っ子」感が強い。
「Russian Roulette」ではアイリーンに守って貰ったり、思い通りにならずスネたりしているし、「Bad Boy」でも同じ描写がある。
「Dumb Dumb」では故障したロボットだったり、イェリは「幼くまだ弱い」存在なのだろう。
Ⅱ. 映画的要素
※軽い映画のネタバレがある為、苦手な方はお気を付けて下さい※
今回のMVは「恋愛」と「ヴァンパイア」の2つのストーリーで考えてみたが、その中でも「恋愛」のストーリーと似た映画がある。
"Lost and Delirious"
簡単なあらすじを書くと、女子寮にメアリーという女の子がやって来る。
メアリーは彼女が来るまでは2人1部屋で過ごしていたポーリーとトリーの同室となるが、実はその2人は恋愛関係にあるという事を知ってしまう。
トリーは周囲に同性愛がバレるのを恐れてポーリーを捨て、他の男性と付き合った事からポーリーは絶望し、報復に乗り出すというストーリーである。
そうなるとMVではウェンディがメアリーの立ち位置(スルギとジョイの仲を知る)なのだろう。
制服を身につけている事や、MVのおおまかな考察とも通じる為に紹介をしてみた次第である。
第三章: 衣装の謎
今回のヴァンパイア要素に際して不思議な事があった。
それは、ヴァンパイアが苦手な筈の「十字架」をモチーフにしたアクセサリーがあまりにも多いという事だ。
そしてこのピアスもそうだが、数えてみた所イェリが十字架のアイテムをたくさん身につけている印象を受ける。
「Automatic」の時はまだ人間だったイェリが十字架をつけていたのは理解できるが、彼女は「Ice Cream Cake」でヴァンパイアに仕立てられた筈だ。
つまり、ここではヴァンパイアが嫌う物をあえて登場させる事でヴァンパイアを逆説的に想像させるという手法を取っているようだ。
そしてこのパジャマのデザインだ。
イェリは「MEOW」つまり猫であり、またアイリーンのモチーフでもある。
ウェンディは「CHERRY」とあり「Hapiness」考察で詳しく書いてあるが、LGBTの暗喩でもあり今までのMVに頻繁に登場する果物である。
この2つについては絶対に何かの意味が込められている。恐らく今までの作品に通じている為、グループの謎であろう。
第四章: まとめ
①MVは「恋愛」と「吸血鬼」の物語が考えられる
②やはりアイリーンがきっかけとなりMVが進行
③イェリとウェンディの2人の行動に今後注意すべき
あとがき
「Bad Boy」考察いかがでしたか。
まずは更新が遅くなり申し訳ございませんでした… ブログの設定を間違えていた事と、生活環境が変わった事から1ヶ月遅れての更新になりました。
まだ新しい生活環境に慣れていないので、次の考察も不定期にはなりますが、今から書くのがとても楽しみなのでしばしお待ち頂けたら幸いです。
今回の作品は曲調が今までのKpopの中でも聴いたことの無い独特なサウンドで、Red Velvetだからこそ消化できた素敵な曲だと思いました。
そして重ねての案内にはなりますが、Twitterにて更新報告をしておりますので、そちらも是非ご活用下さい^^ eto. (@kpop_kousatsu) | Twitter
それではまた。 エト