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【f(x)】Red Light考察

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こんにちは、エトです。

今回は「Red Light」の考察です。

※第二章で映画のネタバレがあります。
苦手な方は「簡潔なあらすじ」を避けてご覧下さい※

第一章: ティザー写真の謎

ここでは写真の内容というよりも、ティザー公開に関する謎について考える。

まずは写真をまとめて以下に示す。



クリスタル




ソルリ




ヴィクトリア




ルナ




アンバー


ティザー写真公開時、何か違和感があった。
他のティザー写真はせいぜい2〜6枚程度だったのが、今回明らかに枚数が多すぎるのだ。

数は1人当たり13枚
そして毎日きっかり9時に公開された。

もうお分かりだろう。どちらも忌み数だ。

13は「13日の金曜日」に例えられる西洋圏では特に避けられる数字であり、9は韓国でも災厄を呼ぶ数字として忌み嫌われる。

では何故そのような忌み数をティザー写真に忍ばせたのか、第二章以降で確認していく。


第二章: ディストピア


Ⅰ. ディストピア要素

このMVを観て、一部の洋画好き・小説好きの方はハッとしたのではないだろうか。

既視感のある作品がいくつか挙げられるのだ。


マトリックス

ウォシャウスキー兄弟監督による、1999年から続くSF映画。映画を観た事は無くても、作品名を聞いた事がある方は多いだろう。

この作品がどう関係しているか。



(左: Red Light MV 右: 映画"マトリックス")

冒頭数秒、黒電話と黒猫が映る。
まさにこれが"マトリックス"の世界観なのだ。


<簡潔なあらすじ>

主人公トーマスは起きていても常に夢の中のような感覚を抱いていたが、それはコンピュータが作り出した仮想世界だった。

裏の顔は天才ハッカーであるトーマス(ハッカー名: ネオ)は、仮想世界からの人類解放を叶えるべく仮想と現実を行き来しながら戦うというストーリー。

簡潔すぎるが、以上が大まかなあらすじだ。


まずは黒電話。マトリックスでは仮想と現実世界を行き来をする為に用いられる。黒電話である理由は「盗聴されにくい」という利点があるからだ。


次に黒猫。現実世界を仮想世界で再現する際に、一種のバグとしてトーマスは同じ黒猫の同じ仕草(=デジャヴ)を目撃する。デジャヴが起こる理由は、人類が真実に気づかないようにする為である。

その為、マトリックスでは「デジャヴが起こる」事を「仮想世界が創られる」というサインと認識し「危険」の象徴とみなしている。


時計じかけのオレンジ

1971年に公開された、スタンリー・キューブリック監督による風刺(的)映画である。

彼女たちの特徴的なビジュアルは「時計じかけのオレンジ」からインスピレーションを受けたと考えられる。


<簡潔なあらすじ>

暴力が横行する荒れた社会で、不良グループのリーダーであるアレックスはやりたい放題の生活を送る。

しかしグループ内のいざこざで、アレックスは仲間に嵌められ1人だけ殺人事件で逮捕されてしまう。

懲役刑が言い渡されるが、刑期を短縮する事を約束に彼は政府が計画するとある実験台に選ばれた。その実験は上手くいったように思われたが、アレックスは暴力を「拒否」するのでは無く「逃避」をするだけで、根本的な実験の成功にはならなかった

精神的に追い詰められたアレックスは自殺を図るが一命を取り留めた。しかし、自殺未遂のせいで政府の支持率は暴落。政府から内密に「実験成功のフリ」を頼まれたアレックスは、以前の不良少年の悪人顔に戻っていた。


タイトル「時計じかけのオレンジ」の意味は、 実験で暴力に対し思考せずただ拒否するだけのアレックスのように、"機械的な反応しかしない歯車で動く人間"と考えられる。

尚、今回のMV製作に全面的に携わったミンヒジン先生は、Red VelvetのMVでもキューブリック作品を取り扱っていた。


1984


(上段: 1984, 下段: Red Light MV)

ジョージ・オーウェルによる同題名の小説を映画化。
まさに、という描写をMVでそのまま取り入れている。


<簡潔なあらすじ>

世界を3つの国が統治し戦争が繰り返される中、その1つの国では市民の思想や行動等が厳しく取り締まられていた。街は「ビッグブラザー(=政府)は常に見ている」という張り紙で溢れている。

主人公スミスは独裁体制に疑問を抱き、禁じられた「思想」をノートに綴り始めるが、ビッグブラザーを敬愛する人物に密告され拷問を受ける。

拷問や洗脳を通して"正当"な人間に変わったスミスは、ビッグブラザーを心から愛するようになった。


華氏451

レイ・ブラッドベリによる作品。
また、当作品からインスピレーションを受けた映画として同タイトルの物や「リベリオン」が考えられる。


<簡単なあらすじ>

舞台はテレビやラジオ等のデジタルメディアしか許されない社会。本を所持する者はその本をファイアマンにすぐさま焼かれ、逮捕された。

本による思考力が奪われた市民たちは、お互いに本を持っていないか監視し合いながら生きていた。

ファイアマンであるガイは、自らの仕事に疑問を持ち、焼くべき本を読み始めた。 本を通して政府への疑問を募らせるガイはやがて密告され、その身が危険に晒される。


Ⅱ. ディストピアとは

ⅠではMVとの関連性が考えられる映画作品を挙げた。
そしてこれらに共通するものは「ディストピア」だ。

ディストピアとは「ユートピア(=理想郷)」をディスったもの、つまり「反理想郷」の事である。

ここでいう理想郷とは芝生の広がるのどかな風景を指すのでは無く、良い意味で管理が行き届いた犯罪の無い平和な世界の事をいう。

例としてMVでのディストピア描写に「焚書」がある。
焚書とは主に言論統制や特定の思想を排除する為に行われ、ナチスでの実例もある。

つまり「ディストピア」とは、政府が自由な言論・思想を抑圧する偏った社会と表現できる。


第三章: MVの謎

第一, 二章で確認した内容を踏まえて考察を行う。

鳴り響く黒電話。誰かが受話器を取った音がする。
政府が創り出した世界に入ったのか。

オッドアイの黒猫が鳴き声を上げる。

クリスタルが持つ焚書。本には恐らく政府にとっての「不都合な真実」が記されているのだろう。

整列する彼女たち。

gifs website

その動きはさながら軍隊のようだ。

タイトル「Red Light」の通り、赤いライトが照らされる場所に彼女たちはいる。

赤信号やパトランプなどのように、赤いライトを見ると人々は警戒しなければならない。

警戒の対象は政府から見たf(x)だ。
しかし、ある意味ではf(x)もまた政府を警戒している。

彼女たちの目に注目しよう。
片目に化粧を施し、カラーレンズを入れている。
つまり冒頭のオッドアイの黒猫はf(x)という事だ。

オッドアイ"odd"には「異常, 異端」という意味がある為、彼女たちは異端者という事になる。


"이건 실제상황 뭐가 잘못된 건지도 몰라
경고하는 누군가 목소리를 잘 들어"

"これが現状 何が間違っているかすら分からない
警告する誰かの声をよく聞いて"


管理社会に不満を抱く彼女たちはその身を呈して「真実, 自由」を求め動き出す。


"눈 크게 떠 거기 충돌 직전 폭주를 멈춰
변화의 목격자가 되는 거야"

"目を大きく見開いて そこへ衝突する直前
暴走を止めて 変化の目撃者になるの"


"서로에게 찾자 빛으로 찬 특별한 비상구"
"互いに探そう 光で満たされた特別な非常口"

"이건 전쟁이 아니야"
"これは戦争じゃない"

f(x)は互いに歩み寄って事態を解決しようと言うが、ここで電球が割れてしまう。

つまり、政府は話し合いでの解決では無く武力での抑圧しか考えていないのだ。

ますますその勢力を広げる政府。
市民たちは思考を奪われたロボットと化す。

彼女たちはレーザーを向けられる「排除対象」なのだ。

gifs website

打ち砕かれるガーベラの花。
ガーベラの花言葉は「希望」だ。

絶望の淵に立たされるf(x)。


"기적은 오는걸 너무 오래 걸렸지만
파란불 우린 기다려 원해"

"奇跡は訪れるわ とても長くかかったけど
青信号を私たちは待ち願ってる"

改善を諦めない彼女たち。
白く明るい世界は「理想郷」か。

gifs website

しかしここで強制的に巻き戻される世界。

爆発する小屋のような建物。「時計じかけのオレンジ」でそっくりな場面がある。

追っ手が来た。ガスマスク姿は「華氏451」のファイアマンを彷彿とさせる。

背後からレーザーを当てられ逃げるf(x)。

逃げ切った彼女たち。
これ以降クリスタルが眼帯を当てる事になる。

オッドアイの黒猫も、両目の色が揃っている。

恐らく彼女たちは、眼帯でオッドアイ(=異端)を隠して当分の間凌ぐ事にしたのだろう。

再び黒電話を介して現実世界へ戻って来た。

gifs website

しかし、彼女たちは既に政府の謀反者として指名手配されているのだった。


Ⅰ. 対義的表象

MVではいくつかの対義的な表象が見られた。


オッドアイと揃った目

異端と"正常"の対比だ。


②華美なミリタリールック

彼女たちは非常に美しい装飾品を身につけつつも軍服を着用している。

水晶のティアラに銃弾の対比が新鮮だ。


③ニットとショートパンツ

上はニットと温かな服装だが、下は短いパンツ。
(アンバーはシャツを着用)


これが何を意味するのか。もう一度今回のテーマをおさらいすると「ディストピア」がキーワードだ。

彼女たちの願いは「ユートピア」の実現。

本来なら「自由な思想」を持ち、美しい装飾品を身につけ、そして温かなニットを着たい。

しかしながら現実は「抑圧された社会」で戦う為の軍服を身につけなければならないのだ。


彼女たちの対義的なファッションは、

独裁と自由」「統一と個性」「戦争と平和

という壮大な相対する課題を表現しているのか。


Ⅱ. 社会批判

有名な話だが、この曲は「セウォル号事件」の批判だと事務所が公式的に発表している。

"침몰 할 때
沈没する時"

"켜졌어 선명한 Red Light
点灯した 鮮明な Red Light"

など、確かに直接的なワードが散見される。

"니가 말한 최선이란 변명 내겐 의문투성이 일뿐
あなたが言う"最善"って言い訳
私にとっては疑問だらけ"

これはセウォル号が事故ではなく「事件」と呼ばれる原因となった、組織的な隠蔽疑惑などに対する無能な政府への皮肉だろう。


第四章: まとめ

①テーマはディストピア

ディストピア作品を多く取り入れている

③MVは抑圧する政府に対抗するf(x)のストーリー

セウォル号事件の批判的要素も見られる


あとがき

「Red Light考察」いかがでしたか。

私自身ディストピア作品が大好きで、中でも「時計じかけのオレンジ」と「1984」子どもの頃から観ていた作品なので、これらについて書けて嬉しかったです。

もしも他のディストピア作品でオススメがあれば是非教えてください。

何よりこのMVはf(x)の美しさを余す事なく楽しめる最高の作品だと思っています。

本当なら本文で使いたかったキャプション、勿体無いので以下に貼ります。





溜息しか出ないです。なんと美しい…


そういえば「Red Light」と同時期に発表されたRed Velvetの「Hapiness」は完全たるユートピアを描いた作品なんですよね。

ミンヒジン先生が両作に携わって、尚且つディストピアユートピアを描くって面白いなと思いました。

もし良ければ是非2つの作品のMVと歌詞を見比べてみて下さいね。

そんなこんなで、楽しみにしていたf(x)の考察も次で一旦終了の予定です。皆様いつもリプライやコメント等、本当にありがとうございます。とても励みになります。


それではまた。 エト