【f(x)】世界観考察
こんにちは、エトです。
今回はSMから輩出された唯一無二の世界観を持つ、f(x)について考察します。
はじめに
今後f(x)の考察をどのように展開していくかについて簡単にまとめると、
①世界観
②Pink Tape_Art Film
③Red Light
④4Walls
以上の4回に分ける予定。(②~④はMV考察)
本来なら「Pink Tape」以前のMV考察も行うべきだが、SMのアートディレクターであるミンヒジン先生が製作に関わった作品に考察要素が多く含まれている為、①~⑧は勝手ながら省略する。
(初期MVはほとんどダンスカットで構成されている)
ただし、f(x)の世界観は前回まで更新したRed Velvetを例に出すと、MV考察よりも歌詞考察の方にフォーカスを当てるのが懸命である。
根拠は第二章以降で確認する。
第一章: f(x)について
まずはf(x)というグループを簡潔に紹介する。
f(x)はSMから2009年にデビュー。
グループ名は数学の関数に由来し、xの値により結果が変わるf(x)のように、メンバーの多様な才能と魅力により多彩な活動を広げるという意味が込められている。
またfが花を意味する英語の"flower"を、
xが女性染色体のXを表している。
第ニ章: f(x)の世界観考察
大前提となる仮説を立てる。全作を見直してf(x)は作品ごとに「恋愛」に対する成長が見られると考えた。
グループを通してカギとなる言葉は紫色で示す。
それでは1作ずつその内容を確認していく。
Ⅰ. LA chA TA
"人生を楽しもう"というメッセージが込められたこの曲はデビューに相応しく、素敵な淑女紳士をf(x)という世界に誘うような歌詞になっている。
つまり、私たちがf(x)の世界へ入った事を意味する。
Ⅱ. Chocolate Love
少女時代とLG電子タイアップでコラボした楽曲。まるでチョコレートのように甘い恋をして溶けてしまいそうな女の子が目に浮かぶ。
"이런 느낌 처음인걸(こんな感じ初めて)"
という歌詞から、異性にときめいた初めての経験か。
Ⅲ. Chu~♡
口付けで眠りから目覚めた童話の主人公をモチーフに、自分も好きな人との口付けを通じて見る世界を広げたいという好奇心旺盛な女の子を描いている。
"입맞추는 순간 잠에서 깬 그녀처럼
(口づけた瞬間眠りから目覚めた彼女のように)"
MVには上に掲載した「白雪姫」や「かえるの王様」「シンデレラ」のような表象も見受けられた。
「白雪姫」と「かえるの王様」はまさにキスで目覚める物語である。
ただし、ここでは童話のプリンセスに憧れている事からまだまだ子どもであると推測できる。
Ⅳ. NU ABO
NU ABOはNU(= New, 新しい) ABO(=血液型)つまり、自分だけの独特の価値観, 性格, 趣向を持った人間を新しい血液型に当てはめて表現した。
歌詞も愛する方法を既存の公式に囚われない自分だけの道を切り開くことを願った、自己実現願望や意志の強さが感じられる曲である。
"몰라 몰라 아직 나는 몰라 기본 기본 사랑공식 사람들의 이별공식(知らない知らないまだ私は知らない 愛の基本公式 人々の別れの公式)"
"달라 달라 나는 너무 달라 내 맘대로 내 뜻대로 좋아 좋아
(違う違う私は全然違う 思う通りに 思いのままにするのが良い)"
彼女たちはまだ愛の公式を知らないが、そもそも愛に公式を当てはめず自由に思い通りの恋愛をしたいという意志が見える。
Ⅴ. 피노키오(Danger)
まずはタイトルにもなった「ピノキオ」について。
名前を聞いて思い浮かぶのはディズニーアニメでよく見たこのキャラクターだろう。
それが何故タイトルに採用されたのか。
要素となる歌詞を以下に洗い出す。
(歌詞は分かりやすいよう多少の意訳を含みます)
"에메랄드 훔쳐박은 눈동자 스륵스륵
머리부터 발끝까지 스캔해 징징윙윙
칼날보다 차갑게 그 껍질 벗겨내"
"エメラルドの瞳をするっと取って
頭から足のつま先までスキャンするの ジンジンウィンウィン 刃物より冷たくその皮をはぐわ"
"궁금투성이의 너 딱 꼼짝마라 너
조각조각 부셔보고
맘에 들게 널 다시 조립할거야
心配性の君 じっとして動かないで
バラバラ (中略) 壊して
気に入るように 君をまた組み立てるの"
"누가 봐도 넌 완벽한 걸 너는 다시 태어난거야
자 이제 입술에 숨을 불어 넣어
꿈꿔 왔잖아 피노키오"
"誰が見ても君は完璧 君は生まれ変わったの
さあ今唇に息を吹き込んで
夢見てきたじゃない ピノキオ"
冒頭から物騒で、要は瞳を取ってスキャンし皮を剥ぐ。そしてバラバラに壊してお気に入りの形に組み立て直すという歌詞。
つまり、好きな相手を自分好みに作り変えるという事。
"암호의 미로 헤맸지 그건 널 열기 위한 Key
매트릭스 덮인 껍질을 벗겨내"
"暗号の迷路を彷徨った それはあなたを開くためのKey マトリックスに覆われた皮を剥ぐ"
察しの通り「マトリックス」とは1999年から始まったアメリカのSF映画シリーズを指しているだろう。
映画マトリックスが描く「現実と仮想」の対比に基づいて考察するとf(x)は理想の人を作り上げたと思っているが、それは人間ではなくピノキオのような人形(=仮想)であるというメッセージと取れる。
だからこそ「피노키오」のサブタイトルは、自分ではなく相手に変化を求める事に対して"Danger"となっているのだろう。
この時点では極めて自分本位の恋愛をしているようだ。
Ⅵ. HOT SUMMER
"도저히 이렇겐 더 안되겠어
내가 어떻게든 좀 손보겠어
낡은 스타일밖에 모르는 널 프로듀스
얼마나 멋져질지 좀 알겠어?"
"大体 これじゃ駄目よ
私がどうにかちょっと手を加えるわ
古いスタイルしか知らないあなたをプロデュース
どれだけ素敵になるか ちょっとでも分かる?"
先程の「피노키오」は、純粋であるからこその恐怖のようなものを感じたが今回は少し大人になった様子。
それでも依然として、相手に変化を求めているようだ。
Ⅶ. Electric Shock
イメージ写真やジャケット写真でメンバーが動物の被り物をしているのは、f(x)の風変わりな姿を想像してほしいとの意味が込められている。
"충 충 충분해 네 사랑이 과분해
격 격 격하게 날 아끼는 거 다 알아
(中略) 전 전 전압을 좀 맞춰서 날 사랑해줘"
"十分なのあなたの愛は 過多なの
激しく私を大切にしてくれてる事 全部分かってる
(中略) 電圧をちょっと合わせて私を愛してよ"
この曲では愛情を電圧に例えているようで、相手側の刺激的な愛情にショックを受けている様子が見られる。
未だ恋愛においてお互いのバランスを上手く保てていないことや、刺激を重視した恋愛を求めていると考えられる。
Ⅷ. 첫 사랑니(Rum Pum Pum Pum)
この曲は初恋を親知らずに例えて描いたものである。
"나는 좀 다를 걸 다른 애들을 다 밀어내고 자리를 잡지
맘 속 깊은 곳에 아주 은밀하게
네 맘 벽을 뚫고 자라난다 특별한 경험"
"私はちょっと違うの 他の子たちは皆(歯茎から)押し上げて来るでしょ
心の奥深い場所に とても密かに
(私は)あなたの心の壁(=歯茎)を貫通して生えた特別な経験よ"
"넌 쉽게 날 잊지 못할 걸 어느 날 깜짝 나타난
진짜 네 첫사랑
이거 어쩌나 곧게 자란 아일 기대했겠지
삐딱하게 서서 널 괴롭히겠지 내가 좀 쉽진 않지"
"あなたは簡単に私を忘れられないわ
ある日突然現れた あなたの本当の初恋
これどうしようか 真っ直ぐ育った子を期待したでしょ?
斜めに生えてあなたを苦しめるの 私は簡単じゃない子"
つまり、この曲は「私と出会う前の初恋は全て偽物」というメッセージが込められている。
頭が割れるくらい苦しみ、私の事しか考えられなくなり、そして一筋縄ではいかない女の子。例え関係が終わっても忘れられない存在である事を親知らずに例えた素晴らしい歌詞であると考える。
今までの歌詞を振り返ると、ここまでは夢見がちで不器用な恋に落ちがちであったが、今回初めて恋愛について客観的であったように感じる。
とは言え、やや傲慢な態度の女の子である事には変わりない。しかし今作で確実にステップアップしているように見受けられる。
Ⅹ. Pink Tape_Art Film
ここから本格的にf(x)の作品をミンヒジン先生が手掛ける事になる。X以降の作品は別記事で詳しく考察する為、ここでは簡潔に書く事にする。(歌詞はありません)
この作品が表すのは端的に言えば「過渡期」である。
今までは良く言えば"純粋"、悪く言えば"幼稚"な恋愛しか経験していなかったが、1人の女性として成長していく過程で感じる好奇心や不安などの複雑な感情をリアルに、そして美しく表象した。
Ⅺ. Red Light
"진짜 사랑이란 어쩌면 아주 느린 파동
真実の愛はもしかするととても遅い波動"
過渡期を超え、瞬間的な"恋愛"から「真実の愛」に気付いたと考えられる。
Ⅻ. 4Walls
"감정이란 꽃은 짧은 순간 피어나는 걸
새 문을 열고 또 열수록 점점 더 커지는
너만이 가득한 4 Walls 신비로운 미로"
"感情という花は短い瞬間に咲くもの
新しい扉を開けて もっと大きくなる
あなたで満たされた4Walls 神秘的な迷路"
まるで花のように突如咲いた愛が、四方を壁で覆われた空間の中に閉じ込められてしまったかのような混乱の感情を描いている。
真実の愛に気付きながらも、その実態はまだ掴めず未だ愛という壮大な迷路に迷い込んだというところか。
第三章: まとめ
とても簡潔にまとめたが、f(x)の世界観は恋愛という概念が一貫しており、
初恋→幻想→刺激的な恋→傲慢→真実の愛→愛の迷路
という恋愛と成長に関する壮大な哲学とも言える。
冒頭にf(x)は関数の公式と書いたが、この関数は公式でありながら結果が型に当てはまらないという矛盾が生じている。
つまり、f(x)を恋愛の公式と仮定すると「x」に"私"を代入しても"あなた"を代入しても必ず式として成り立つ。
公式と言いながら全くの自由なのである。
幻想的な恋愛も、ちょっぴり猟奇的な恋愛も、重い恋愛も、そして性別に関わらない愛も。f(x)というグループはそれを体現してくれているのではないだろうか。
あとがき
「f(x)世界観考察」いかがでしたか。
まずはf(x)の考察をこちらの都合で1作ずつ記事として上げられずすみません。
ただ、歌詞にフォーカスを当て時系列で考察するのは流れが掴みやすく個人的にとても書きやすかったです。
f(x)はそれまでも独創的で素敵でしたが、ミンヒジン先生にプロデュースされてから彼女たちの個性が最大限に引き出されて眼を見張るような変化を遂げましたよね。
初めて「Pink Tape_Art Film」を見た時はその世界観に打ち震えた記憶があります。
次の更新は↑の予定なので、良ければ是非ご覧下さい。短いですが本当に素敵で大好きな作品です。
それではまた。 エト
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